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犬歯がなかなか動かない?歯列矯正で移動が遅れる原因と対処法
歯列矯正治療を進める中で、「他の歯は動いているのに、犬歯だけがなかなか動かない…」と不安を感じる方がいらっしゃるかもしれません。犬歯は歯根が長く、歯槽骨の中でしっかりと支えられているため、他の歯に比べて移動に時間がかかることがある歯の一つです。しかし、予定よりも明らかに動きが遅い場合は、何らかの原因が隠れている可能性があります。犬歯の移動が遅れる原因として考えられるのは、まず「骨の硬さや密度」です。骨が非常に硬い方や、骨密度が高い方は、歯の移動に対する抵抗が大きく、動きが緩やかになることがあります。これは個人の体質によるものであり、ある程度は仕方のない側面もあります。次に、「歯根の形態や位置」も影響します。犬歯の歯根が湾曲していたり、隣の歯の歯根と近接していたり、あるいは歯根の先端が皮質骨(骨の硬い外層)に接触していたりすると、スムーズな移動が妨げられることがあります。また、稀なケースですが、「歯根癒着(アンキローシス)」といって、歯根と歯槽骨が直接くっついてしまっている状態だと、矯正力では歯が全く動かないことがあります。これはレントゲン検査だけでは診断が難しく、実際に力を加えてみて初めて判明することもあります。さらに、「加えられている矯正力の問題」も考えられます。力が弱すぎれば歯は動きませんし、逆に強すぎると歯根膜に過度な負担がかかり、血流が途絶えてしまい、かえって歯の動きが停滞してしまうことがあります。また、力の方向が適切でない場合も、効率的な移動は期待できません。「患者さんの協力度」も、間接的に影響することがあります。例えば、顎間ゴムの使用を指示されているにもかかわらず、装着時間が短い場合などは、全体の噛み合わせの調整が遅れ、結果的に犬歯の移動にも影響が出ることがあります。では、犬歯の動きが遅い場合、どのような対処法があるのでしょうか。まずは、担当の歯科医師に相談し、原因を特定してもらうことが重要です。レントゲン撮影やCT撮影などで歯根や骨の状態を再評価したり、矯正力の強さや方向を見直したりする必要があるかもしれません。場合によっては、補助的な装置(アンカースクリューの使用など)を追加したり、外科的な処置を検討したりすることもあります。焦らず、歯科医師とよくコミュニケーションを取りながら、根気強く治療を進めていくことが大切です。