後戻りを防ぐ矯正専門医からのアドバイス
歯列矯正後の「後戻り」は、歯が元の位置に戻ろうとする生理的な性質によるものです。歯の周囲の歯根膜という組織が新しい位置に馴染むまで時間がかかるため、また噛む力や舌の癖、唇の力などが常に歯に加わり、これらのバランスが崩れると歯並びが変化する原因となります。親知らずの影響や加齢による顎の骨の変化も後戻りの要因です。これを防ぐために最も重要なのは、保定装置、つまりリテーナーを歯科医師の指示通りに正しく使用することです。リテーナーは動かした歯が新しい位置で安定するまでの間、歯を支え後戻りを防ぐ非常に重要な役割を担います。リテーナーには取り外し可能なプレートタイプやマウスピースタイプ、固定式のワイヤータイプなどがあり、患者さんの状態やライフスタイルを考慮して歯科医師が最適なものを選択します。それぞれのメリット・デメリットを理解し相談して選ぶことが大切です。日常生活では、リテーナーの適切な使用に加え、舌で歯を押す癖や頬杖、うつ伏せ寝など歯に不必要な圧力をかける習慣があれば改善を意識し、定期的な歯科検診も欠かせません。検診では歯並びやリテーナーの状態をチェックし、早期に問題を発見できれば対処もしやすくなります。もし後戻りしてしまった場合は、自己判断せずに速やかに相談してください。軽度ならリテーナーの調整や再製作、進行していても部分的な再矯正で対応できる場合も多いので、諦めずに美しい歯並びを取り戻す方法を一緒に考えましょう。