近年、お子さんの歯並びに対する保護者の関心は非常に高まっています。見た目の美しさだけでなく、将来の健康にも大きく関わる歯並びについて、小児歯科専門医の佐藤先生にお話を伺いました。佐藤先生によると、子供の歯並びの基礎は乳歯列期から既に形成され始めており、この時期の口腔環境や生活習慣が永久歯の歯並びに大きな影響を与えるとのことです。まず、乳歯の虫歯を放置しないことが非常に重要だと先生は強調します。乳歯が虫歯で早期に失われたり、形が大きく変わってしまったりすると、後から生えてくる永久歯が正しい位置に萌出するためのスペースが不足したり、誘導がうまくいかなくなったりして、歯並びが乱れる原因となるそうです。そのため、乳歯の時期から丁寧な歯磨き習慣をつけさせ、定期的な歯科検診で虫歯の早期発見・早期治療を心がけることが、将来の美しい歯並びへの第一歩となると言います。また、指しゃぶりや舌突出癖、口呼吸といった習癖も、子供の歯並びに悪影響を及ぼす代表的な要因です。指しゃぶりは3歳頃までであれば生理的なものとして許容範囲ですが、それ以降も長く続くと出っ歯や開咬を引き起こす可能性が高まります。舌で前歯を押す癖や、唇を噛む癖なども同様に歯を不自然な方向に移動させてしまう力となります。口呼吸が習慣化すると、口腔内が乾燥しやすくなるだけでなく、口周りの筋肉のバランスが崩れて顎の成長に影響を与え、歯列の幅が狭くなったり、顔貌にも変化が現れたりすることがあるそうです。これらの習癖に気づいた場合は、無理にやめさせるのではなく、なぜそのような癖が出ているのか原因を探り、遊びやトレーニングを取り入れながら楽しく改善していくアプローチが大切だと佐藤先生は語ります。食事の面では、よく噛んで食べる習慣をつけることが顎の健全な発育を促し、歯が並ぶための十分なスペースを確保するために重要です。柔らかいものばかりでなく、適度な硬さのある食材を食事に取り入れ、一口につき30回程度噛むことを意識させると良いでしょう。そして、最も大切なのは、子供の歯並びに何か気になる点があれば、些細なことでも早めに小児歯科や矯正歯科の専門医に相談することだと先生はアドバイスします。早期に問題を発見できれば、比較的簡単な装置やトレーニングで改善できるケースも多く、本格的な矯正治療が必要になった場合でも、より良い結果が得られやすくなります。
小児歯科医に聞く子供の歯並び育成法