歯列矯正治療中に感じる喉の違和感には、唾液の量や質、そしてその流れが関わっていることがあります。唾液は、私たちの口腔内や喉の健康を守るために非常に重要な役割を担っており、そのバランスが崩れると、乾燥感やネバつき、そして不快な違和感が生じやすくなるのです。唾液の主な役割としては、まず「潤滑作用」があります。口腔内や喉の粘膜を潤し、食事や会話をスムーズにする働きです。また、「自浄作用」によって、食べかすや細菌を洗い流し、口腔内を清潔に保ちます。さらに、「抗菌作用」を持つ成分が含まれており、細菌の増殖を抑えて虫歯や歯周病、口臭を防ぎます。そして、「消化作用」として、食べ物に含まれるデンプンを分解する酵素(アミラーゼ)を含んでいます。歯列矯正治療中は、これらの唾液の働きに影響が出る可能性があります。例えば、矯正装置が口腔内にあると、異物と認識されて一時的に唾液の分泌量が増加することがあります。しかし、逆に装置の違和感や痛みから、唾液を飲み込む回数が減ってしまったり、口呼吸が増えて口腔内が乾燥しやすくなったりすることもあります。また、ストレスや緊張状態が続くと、唾液の質が変わり、サラサラとした唾液ではなく、ネバネバとした粘稠性の高い唾液が多く分泌されることがあります。このような唾液の量や質の変化は、喉の乾燥感やイガイガ感、物が飲み込みにくいといった違和感に繋がりやすくなります。特に、唾液の分泌量が減少すると、喉の粘膜の保護機能が低下し、外部からの刺激に敏感になったり、炎症を起こしやすくなったりします。では、矯正治療中に唾液のバランスを整え、喉の違和感を軽減するためにはどうすれば良いでしょうか。まず、こまめな水分補給を心がけ、口腔内と喉の乾燥を防ぐことが基本です。糖分の少ない水やお茶を少量ずつ頻繁に飲むのが効果的です。また、よく噛んで食べることも唾液の分泌を促します。矯正中で硬いものが食べにくい場合は、ガムを噛むのも良いでしょう。舌を動かす運動や、唾液腺マッサージ(耳下腺、顎下腺、舌下腺のあたりを優しくマッサージする)も、唾液の分泌を助けると言われています。加湿器を使って室内の湿度を保つことも、喉の乾燥予防に繋がります。もし、唾液のネバつきや口の渇きがひどく、喉の違和感が強い場合は、担当の歯科医師に相談しましょう。保湿剤や人工唾液などを処方してもらえる場合もあります。