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受け口治療の主役!下の歯を動かす矯正のメカニズム
下の歯が上の歯より前に出ている「反対咬合」、いわゆる「受け口」。特徴的な顔貌や、発音のしにくさ、食べ物の噛み切りにくさなど、多くの悩みの原因となります。この受け口の治療において、まさに主役とも言える動きをするのが「下の歯」です。受け口を改善するための歯列矯正は、主に下の歯列全体を後方へ移動させることが中心となります。そのメカニズムは、どのようなものなのでしょうか。治療のステップは、まず歯のガタつきを整えることから始まります。その後、下の歯列を後ろに下げるための「スペース」を確保する必要がある場合、一般的に下の左右の第一小臼歯(前から4番目の歯)を抜歯します。この抜歯によって作られたスペース(片側約7〜8mm)が、前歯を後退させるための貴重な場所となります。スペースが確保されると、いよいよ下の歯を後ろに動かす本格的なステージに入ります。ここでは、「顎間ゴム」という、患者さん自身が上下の顎にかけるゴムが絶大な効果を発揮します。受け口の治療では、一般的に「3級ゴム」と呼ばれるかけ方をします。これは、下の犬歯あたりから、上の奥歯にかけてゴムを装着し、下の歯列全体を後方へ引っ張る力を加えるものです。このゴムかけを一日20時間以上、毎日続ける地道な努力が、治療の成否を大きく左右します。ワイヤーの力とゴムの力が協調して働くことで、下の前歯は徐々に後退し、正しい位置である上の歯の内側へと収まっていきます。しかし、中には歯を動かすだけの矯正治療では、改善に限界があるケースも存在します。それは、歯並びだけでなく、下顎の骨そのものが過剰に成長している「骨格性の反対咬合」です。この場合、歯列矯正に加えて、下顎の骨を切って後方に下げる外科手術を併用する「外科的矯正治療」が必要となります。手術と聞くと怖く感じるかもしれませんが、骨格レベルでの根本的な改善が可能で、顔貌も劇的に変化します。あなたの受け口の原因が歯にあるのか、骨格にあるのか。それを正確に診断し、最適な治療法を選択することが、コンプレックス解消への最も確実な道筋です。