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下の歯だけ治したい!を叶える部分矯正の現実
「上の歯並びは気にならないけれど、下の前歯のガタつきだけがコンプレックス…」「費用と期間を抑えて、下の歯だけ手軽に治したい」そんなピンポイントな悩みに応える治療法として注目されているのが、下の歯だけを対象とした「部分矯正」です。全体の歯を動かす全体矯正に比べて、治療期間が数ヶ月から1年程度と短く、費用も20〜50万円程度と安価に抑えられるため、非常に魅力的な選択肢に思えるかもしれません。しかし、この手軽に見える部分矯正には、知っておくべき「現実」と「限界」が存在します。下の歯だけの部分矯正が適応となるのは、あくまで「奥歯の噛み合わせに問題がなく、前歯の軽度の不正に限られる」という厳しい条件があります。例えば、少しだけ重なり合った前歯を整えたり、小さな隙間を閉じたりするケースです。このような場合、部分矯正はあなたの悩みをスピーディーに解決する最良の方法となり得ます。一方で、下の歯のガタつきの原因が、単に歯の並び方だけでなく、顎が小さいことによるスペース不足や、受け口(反対咬合)の傾向など、骨格的な問題に起因している場合は、下の歯だけを動かしても根本的な解決にはなりません。無理に下の歯だけを並べようとすると、歯列のアーチが前に広がり、結果的に口元が不自然に突出してしまったり、上下の噛み合わせのバランスが崩れてしまったりするリスクがあります。さらに、安定した噛み合わせが得られないため、治療後に歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」も起きやすくなります。結局、満足のいく結果が得られず、後から全体矯正でやり直すことになれば、かえって時間も費用も余計にかかってしまうという本末転倒な事態にもなりかねません。下の歯だけの矯正を検討する際は、まず精密検査を受け、なぜ下の歯並びが悪くなっているのか、その根本原因を専門医に正しく診断してもらうことが不可欠です。そして、部分矯正でできることの限界と、全体矯正を行った場合のメリットについて、両方の説明を十分に受けた上で、自分にとって最善の道を選択することが、後悔のない治療への第一歩となるのです。