歯列矯正治療中は、様々な要因から「口呼吸」になりやすく、それが喉の乾燥や違和感、さらには風邪を引きやすくなるなどのトラブルを引き起こすことがあります。健康な状態では、私たちは主に鼻で呼吸し、鼻腔内で空気を加温・加湿し、異物を除去しています。しかし、口呼吸になると、冷たく乾燥した空気が直接喉の粘膜に当たり、粘膜を乾燥させてバリア機能を低下させてしまうのです。矯正治療中に口呼吸が増える原因としては、まず「矯正装置の存在」が挙げられます。特に、装置を装着したばかりの頃や、裏側矯正、マウスピース型矯正装置などでは、口腔内の違和感から無意識のうちに口が開きやすくなることがあります。また、「歯の移動に伴う噛み合わせの変化」も影響します。一時的に噛み合わせが不安定になると、唇が閉じにくくなったり、顎の位置が定まらなくなったりして、口呼吸を誘発することがあります。さらに、「元々の鼻炎やアレルギー」がある方は、矯正治療をきっかけに口呼吸が悪化することもあります。では、矯正中の口呼吸による喉のトラブルを防ぐためには、どのような対策があるのでしょうか。最も基本的な対策は、「意識して鼻呼吸を心がける」ことです。日中、気づいた時に口を閉じ、鼻で呼吸するように意識しましょう。就寝中の口呼吸を防ぐためには、口閉じテープ(マウステープ)を使用するのも有効です。これは、唇に医療用のテープを貼ることで、睡眠中の口開きを防ぎ、鼻呼吸を促すものです。ただし、鼻詰まりがひどい場合は使用を避けましょう。次に、「口腔内と室内の加湿」も重要です。こまめに水分を補給し、喉を潤すようにしましょう。特に乾燥しやすい冬場やエアコンの効いた室内では、加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つことが大切です。マスクの着用も、呼気に含まれる水分で喉の乾燥を和らげる効果があります。また、鼻詰まりが原因で口呼吸になっている場合は、耳鼻咽喉科を受診し、鼻炎やアレルギーの治療を行うことが根本的な解決に繋がります。点鼻薬や内服薬で鼻の通りを良くすることで、自然と鼻呼吸がしやすくなります。歯列矯正治療は、歯並びだけでなく、呼吸の仕方にも影響を与えることがあります。口呼吸の習慣は、喉のトラブルだけでなく、歯並びの悪化や顔貌の変化にも繋がる可能性があるため、この機会に鼻呼吸を意識し、健康的な呼吸習慣を身につけることを目指しましょう。