「受け口」とは、下の歯が上の歯よりも前に出ている噛み合わせのことで、専門的には「下顎前突(かがくぜんとつ)」または「反対咬合(はんたいこうごう)」と呼ばれます。この状態は、見た目のコンプレックスに繋がりやすいだけでなく、様々な機能的な問題を引き起こす可能性があるため、歯列矯正治療の対象となる代表的な不正咬合の一つです。受け口の主な症状としては、まず「審美的な問題」が挙げられます。下顎が突出して見えるため、顔つきがやや怒っているように見えたり、しゃくれた印象を与えたりすることがあります。また、横顔のEライン(鼻の先端と顎の先端を結んだ線)のバランスが崩れやすいのも特徴です。機能面では、「咀嚼障害」が起こりやすくなります。前歯で食べ物を上手く噛み切ることができなかったり、奥歯に過度な負担がかかったりすることがあります。これにより、消化不良を起こしやすくなったり、特定の歯がすり減ったり、顎関節に負担がかかって顎関節症を引き起こしたりするリスクも高まります。さらに、「発音障害」も受け口の方によく見られる症状です。特に、サ行、タ行、ナ行など、舌を上の前歯の裏側に接触させて発音する音が不明瞭になりやすい傾向があります。では、受け口の原因は何なのでしょうか。原因は一つではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合っていることが多いです。まず、「遺伝的要因」が考えられます。両親や近親者に受け口の方がいる場合、骨格的な特徴が遺伝し、受け口になりやすい傾向があります。次に、「骨格的な問題」です。下顎の骨が上顎の骨に比べて過度に成長してしまったり、逆に上顎の成長が不十分であったりする場合、骨格的な不調和から受け口になります。これは、成長期における顎の成長のアンバランスが主な原因です。また、「歯の傾斜や位置の問題」も原因となり得ます。骨格的には大きな問題がなくても、上の前歯が内側に傾いていたり、下の前歯が外側に傾いていたりすることで、反対咬合が生じることがあります。さらに、「口腔習癖」も影響を与えることがあります。幼少期の指しゃぶりや、舌で下の前歯を押す癖(舌突出癖)、口呼吸などが長期間続くと、顎の成長や歯並びに悪影響を及ぼし、受け口を誘発したり悪化させたりする可能性があります。これらの原因を正確に診断し、適切な治療計画を立てることが、受け口治療の成功の鍵となります。
受け口(下顎前突)とは?歯列矯正で改善できる症状と原因