歯列矯正治療の最終段階で行われる「ゴムかけ」は、患者さん自身の協力が治療結果を大きく左右する、自己管理能力が問われる治療法です。歯科医師から指示された通りにゴムを装着しなかった場合、つまり「サボってしまった」場合、残念ながら様々な悪影響が生じる可能性があります。まず、最も直接的な影響は、「治療期間の延長」です。ゴムかけは、ワイヤーだけでは難しい精密な歯の移動や噛み合わせの調整を行うために不可欠です。指示された時間通りにゴムを装着しなければ、歯は計画通りに動かず、目標とする噛み合わせに到達するまでに余計な時間がかかってしまいます。場合によっては、数ヶ月単位で治療期間が延びてしまうこともあり、これは患者さんにとって大きな負担となるでしょう。次に、「治療結果の質の低下」も懸念されます。ゴムかけを怠ると、上下の歯がしっかりと噛み合わなかったり、歯と歯の間にわずかな隙間が残ってしまったり、正中線がズレたままになったりと、細部の仕上がりが不十分になる可能性があります。せっかく長期間頑張ってきた矯正治療も、最後の仕上げがうまくいかなければ、満足のいく結果が得られないかもしれません。さらに、不完全な噛み合わせは、「後戻りのリスク」を高めることにも繋がります。歯は、矯正治療後も元の位置に戻ろうとする性質(後戻り)がありますが、しっかりと安定した噛み合わせが確立されていれば、この後戻りをある程度抑制することができます。しかし、ゴムかけをサボって中途半端な噛み合わせで治療を終えてしまうと、歯が不安定な状態のままとなり、後戻りが起こりやすくなるのです。場合によっては、再治療が必要になるケースも考えられます。また、歯科医師との信頼関係にも影響を与えかねません。歯科医師は、患者さんの協力を前提として治療計画を立てています。ゴムかけをサボっていることが分かると、治療計画の見直しが必要になったり、歯科医師が期待するような治療効果が得られず、双方にとって不幸な結果を招くことにもなりかねません。歯列矯正の最終段階は、ゴールが目前に見えているからこそ、油断せずに自己管理を徹底することが重要です。面倒に感じることもあるかもしれませんが、美しい歯並びと理想的な噛み合わせを手に入れるための最後のひと踏ん張りだと考え、歯科医師の指示をしっかりと守りましょう。
ゴムかけをサボるとどうなる?歯列矯正最終段階の自己管理の重要性