歯列矯正治療を始めてから、なんだか喉に違和感がある、イガイガする、物が飲み込みにくいといった症状を感じる方が稀にいらっしゃいます。歯の治療と喉の不調は一見すると無関係に思えるかもしれませんが、実はいくつかの要因によって関連している可能性が考えられます。まず、最も直接的な原因として考えられるのは、「矯正装置による物理的な刺激」です。特に、歯の裏側に装置を取り付ける裏側矯正(舌側矯正)の場合、装置が舌や喉に近い部分に接触しやすく、それが異物感や刺激となって喉の違和感を引き起こすことがあります。また、奥歯にバンドと呼ばれる金属の輪を装着している場合、そのバンドの縁が喉の奥の粘膜にわずかに触れることで、イガイガ感や咳の原因になることもあります。次に、「口呼吸の増加」も喉の違和感と関連が深いです。歯列矯正中は、装置の存在や歯の移動に伴う噛み合わせの変化によって、無意識のうちに口が開きやすくなったり、鼻呼吸がしにくくなったりして、口呼吸が増える傾向があります。口呼吸をすると、乾燥した空気が直接喉の粘膜に当たり、喉が乾燥して炎症を起こしやすくなります。これが、喉の痛みやイガイガ感、咳といった症状に繋がるのです。さらに、「唾液の性状や量の変化」も影響している可能性があります。矯正装置が口腔内にあると、唾液の分泌が促進されることもあれば、逆に装置の違和感から飲み込みにくさを感じ、結果的に口腔内や喉が乾燥しやすくなることもあります。唾液には、口腔内を潤し、細菌の増殖を抑える重要な役割があるため、唾液のバランスが崩れると喉の粘膜も乾燥しやすくなり、違和感が生じることがあります。また、稀なケースではありますが、「精神的なストレス」が喉の違和感(咽喉頭異常感症、ヒステリー球などと呼ばれることもあります)として現れることもあります。矯正治療中の痛みや不快感、見た目への気遣いなどがストレスとなり、自律神経のバランスが乱れることで、喉に何か詰まっているような、あるいは締め付けられるような感覚が生じることがあります。これらのように、歯列矯正中の喉の違和感は、様々な要因が絡み合って起こる可能性があります。症状が気になる場合は、自己判断せずに、まずは担当の歯科医師に相談してみることが大切です。
歯列矯正と喉の違和感?その意外な関係性と考えられる原因