お子さんの歯列矯正を考える際、保護者の方から「歯列矯正で顎の成長を促して、顎を伸ばすことはできますか?」といったご質問を受けることがあります。子供の時期、特に成長期に行う歯列矯正(主に第一期治療や咬合育成と呼ばれるもの)は、大人の矯正治療とは異なり、顎の骨の成長発育をコントロールし、正しい方向へ導くことを目的の一つとしています。このため、ある意味では「顎の成長を助け、結果として顎が良い方向に伸びるように促す」可能性はあります。しかし、これも無制限に顎を伸ばせるわけではなく、いくつかの重要なポイントがあります。まず、子供の顎の成長には、上顎と下顎で成長のピーク時期が異なります。上顎の成長は比較的早く、10歳くらいまでにほぼ完了すると言われています。一方、下顎の成長は身長が伸びる時期と関連して、思春期頃にピークを迎えることが多いです。したがって、例えば下顎が小さい、あるいは後退しているといった「下顎の後退症」や「小下顎症」の傾向があるお子さんの場合、下顎の成長が期待できる時期に、その成長を前方へ促進するような特殊な矯正装置(例えば、機能的矯正装置や顎外固定装置など)を用いることがあります。これにより、下顎が本来持っている成長のポテンシャルを最大限に引き出し、上下の顎のバランスを改善することを目指します。この結果、治療前と比較して下顎が前方に成長し、見た目として「顎が伸びた」と感じられることはあります。また、上顎の幅が狭いために歯が並びきらない「叢生(そうせい)」や、下顎が横にずれている「交叉咬合(こうさこうごう)」などの場合、上顎の骨を側方に拡大する装置(急速拡大装置など)を用いて、歯が並ぶためのスペースを作ったり、上下の顎の幅のバランスを整えたりします。これも、顎の骨の成長を正しい方向に誘導する治療と言えます。しかし、これらの治療はあくまでお子さん自身の成長力を利用するものであり、遺伝的に定められた成長の限界を超えるほど顎を大きくしたり、長くしたりすることはできません。また、治療の開始時期や期間、使用する装置、そしてお子さんの協力度などによって、その効果は大きく変わってきます。大切なのは、お子さんの顎の成長パターンや歯並びの問題点を早期に発見し、適切な時期に専門医に相談することです。
子供の歯列矯正と顎の成長!伸びる可能性はある?