歯列矯正を始めた人が、歯科医師や経験者から必ずと言っていいほど注意される食べ物、それが「カレー」です。なぜ、数ある食べ物の中でもカレーはこれほどまでに名指しで禁止されるのでしょうか。その理由は、カレーの黄色い色素の正体である「ターメリック(ウコン)」に含まれるクルクミンという成分の、驚異的な着色力にあります。歯列矯正、特に透明なブラケットや白いワイヤーといった審美性を重視した装置を使用している場合、歯に装置を固定するために「モジュール」と呼ばれる小さなゴムリングや、歯を動かすための「パワーチェーン」というゴムが使われます。これらのゴム製品は、ポリウレタンなどの素材でできており、表面に微細な凹凸があるため、色素が非常に吸着しやすい性質を持っています。クルクミンは、このゴムの素材と非常に相性が良く、一度吸着すると簡単には落ちません。まるで布を染め上げるように、透明や水色だったゴムを、瞬く間に鮮やかな蛍光イエローに変えてしまうのです。この着色は非常に強力で、食後の歯磨きぐらいでは全く歯が立ちません。結果として、せっかく目立たない装置を選んだのに、口を開けるたびに黄色いゴムがキラリと光る、という非常に残念な状態になってしまいます。また、ゴムだけでなく、ブラケットを歯に接着している接着剤の縁の部分も、わずかに着色することがあります。歯そのもの(エナメル質)がカレーで即座に染まるわけではありませんが、装置周りが黄色くなることで、口元全体が不潔に見えたり、歯が黄ばんで見えたりする原因となるのです。特に、次の調整日まで数週間あるタイミングでカレーを食べてしまうと、その間ずっと黄色く染まった装置と付き合わなければなりません。これが、歯列矯正中にカレーが「絶対的NG食品」として語られる、最大の理由なのです。