長かったようで、あっという間だった二年半。今日、私はついに、歯列矯正の装置を外しました。歯科衛生士さんが一つ一つブラケットを外していく、パチン、パチンという小気味よい音。全ての装置が取り除かれ、先生から「はい、お疲れ様でした」と手鏡を渡された瞬間、私の目からは、こらえきれずに涙が溢れました。鏡に映っていたのは、夢にまで見た、凹凸のない、滑らかな歯のアーチ。そして、何より嬉しかったのは、歯の表面に何も付いていない、そのツルツルとした解放感でした。歯科医院からの帰り道、私の足は、吸い寄せられるように一つの場所へ向かっていました。それは、何の変哲もない、駅前のカレーチェーン店です。そう、私が矯正を卒業したその足で、一番にしたかったこと。それは、誰にも、何も気にすることなく、心置きなくカレーライスを頬張ることでした。矯正期間中、私は一度もカレーを食べませんでした。調整日前日に食べるという裏ワザも知っていましたが、完璧主義の私は、わずかな着色のリスクさえも避けたかったのです。そのストイックな我慢が、今、この瞬間に報われる。店のドアを開けると、懐かしいスパイスの香りが私を包み込みます。カツカレーの食券を買い、カウンター席に座る。数分後、目の前に置かれた、湯気の立つ黄金色のカレーと、揚げたてのカツ。私は深呼吸を一つして、スプーンを手に取りました。一口、口に入れる。スパイスの複雑な風味と、カツの衣のサクサク感、そして白米の甘み。それらが口の中で一体となって、私の味覚を歓喜させます。「…美味しい」。思わず声が漏れました。歯に何かが挟まるのを気にすることなく、ゴムが黄色くなるのを心配することなく、ただ純粋に「美味しい」と感じられること。それが、これほどまでに幸せなことだったなんて。私は夢中でスプーンを動かし、あっという間に一皿を平らげました。歯並びが綺麗になったこと以上に、この「食の自由」を取り戻せたことが、矯正治療をやり遂げた最大の喜びなのかもしれない。そんなことを思いながら、私は満ち足りた心で、店の外の新しい世界へと踏み出しました。
矯正卒業の日に私が一番にしたかったこと